ポーランド旅行 その22 閑話休題 その3 キリスト教について
2005.10.18
我らがツアーの添乗員は吉本新喜劇からお誘いが来ても不思議でないほどに、ユーモアたっぷりで軽妙洒脱な語り口はツアー客に大受けだった。だから、クラクフからワルシャワまでのバス移動での3時間余りが苦にならぬ楽しい雰囲気作りをしてくれた。その中で、ほんの少し「為になる話」として彼一流の話術で楽しく話してくれたのが「キリスト教について」である。以下に添乗員の話に私が尾ひれをつけて閑話休題 その3として書き残すことにする。
宗教が変わると街の雰囲気が変わる。時として文化や人の性格まで変わるのかもしれない。ヨーロッパを旅行すると、沢山のキリスト教の教会を見る機会が多い。そのキリスト教もいろいろある。大きく分けると「ローマン・カトリック」と「プロテスタント」、そしてギリシャ正教とかロシア正教等の「正教」である。
「カトリック」は一番古い、キリスト教の元になったものといえる。キリストの弟子ペテロがローマで布教活動をしてローマに設立された教団だ。西ヨーロッパ諸国を中心に広まったものでローマ法王を頂点とする組織である。先頃亡くなってしまったが、ポーランド出身のヨハネ・パウロ2世が法王として勤めていたため、ポーランドの各地でヨハネ・パウロ2世の遺蹟が語られている。
現在はドイツ出身のラツィンガー枢機卿が「根比べ」ではなくて「コンクラーベ」という次期法王選出選挙で選ばれて法王に就任し、ベネディクト16世と名乗ることになったのもついこの間のことだ。
「正教」にはいろいろある。ギリシャ正教、ロシア正教、ブルガリア正教、ルーマニア正教、アルメニア正教等々主として東欧諸国に根づいた。こちらの方がオーソドックスで、正しいのだという意味だ。それを日本語に直して正教とした。
「プロテスタント」はドイツのルターが宗教改革を唱えてカトリックの腐敗に抵抗して起こした。それは間違っている!!と異議を申し立て、抗議=プロテストして生まれたものだからプロテスタント。アメリカ大統領ブッシュも中国訪問の折プロテスタント信者としてミサに参加したと新聞で報じていた。
もともとはカトリックがあって、キリストが最後の晩餐でも「このパンを私の身とし、このワインを血として頂きなさい」と言った。即ち、質素な生活をしなさいというのが本来の教えだったのに、一時期カトリックが腐敗した時があった。信者を集めろ、その為には立派な教会を建てよう、その為のお金を集めよう、というわけだ。
何か悪いことをしても免罪符を買って金で解決できた。バチカンの聖ピエトロ大聖堂建築のための寄付を集める方便として免罪符を乱発したこともあった。このため、イタリアとかスペイン、フランスなどの教会は大変豪華なものが出来、立派な絵画や彫刻が残った。我々が観光でそれを見ることが出来るのもそのお陰かもしれない。反対にドイツなどはケルン大聖堂を除くと驚くほどのものはない。
質素に暮らすのはいやだ。美味いものを食べて、飲んで、騒いで、と言うような生活態度からラテン系の世界で食文化が発達した。また、音楽が発達したりして陽気な人種が多い。イタリア人はよく飲んで歌う。男は女性が大好きで女と見れば口説く。そして昼寝して大騒ぎだ。地球規模で考えると南に位置するほど、例えばイタリア、スペイン、ポルトガル、フランスなどの国々に行くほど食べ物がうまい。
逆に北に行くと余り美味い食い物にありつけない。ドイツなどではジャガイモとせいぜいソーセージくらいなもので、オランダ、イギリス、アメリカなども食文化が発達せず、フランス料理とかイタリア料理という看板を見ることはあっても、イギリス料理等という看板を掲げるレストランはあまり見かけない。アメリカの代表的料理と言われてもマクドナルドのハンバーガーを朝から食べる気はしない。同じキリスト教国といっても宗派によってだいぶん文化が違うのである。
「正教」になると彫刻が禁止だと言う点が特徴的だ。ギリシャを旅すると道路の脇にキリストの絵が祠の中に祀られている。ロシアのクレムリンの中の教会でも沢山のイコンが飾られている。「イコン=絵」であって「遺恨」ではない。至る所に飾られたり贈り物にされたりしている。イコンは英語でアイコン。パソコン用語でアイコンと言えばパソコン画面に出てくる小さな絵柄をいい、これをクリックするといろいろな作業が出来るようになっている。
「カトリック」では聖人の「像」が飾られる。だからカトリックの世界では彫刻が発達した。キリストもマリアもその他の聖人も崇拝する。カトリックでは神父さんとは言っても牧師さんとは言わない。様々な罪を犯す我々人間が神に謝罪するときに神父を通じて懺悔する。教会が神の国への入り口であり、神父さんは神との間での通訳者という位置づけになる。
一方牧師さんはプロテスタントの言い方だ。人間は直接神と話できると考え、キリストだけを崇拝する。もちろんマリアさんもその他の聖人も尊敬はするが崇拝はしないのだそうな。このように一寸細かくキリスト教を見てくると同じヨーロッパを旅行するにもガイドの話がよく分かる。宗教心とか信仰などという難しいことは抜きにして勉強したら少なくともヨーロッパ旅行が一段と楽しくなるはずだ、と添乗員は力説した。
世界にはまだまだ沢山の宗教がある。例えばイスラム教である。イスラム教をもっと知れば何故今エルサレムで、イラクでもめているかも判ってくる。どちらがよくてどちらが悪いと言い切れないところに悩ましいところがあるのだという。また、ユダヤ教が判ればもっと沢山ユダヤ人のことが判り、ナチス・ドイツのユダヤ人大虐殺「ホロコースト」が判るかもしれない。そして大きくは世界の金融、経済が判るとさえもいわれているのだから。